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全国からの問い合わせに即答。「教えて!SOMPO」がもたらした100万時間の業務効率化

損害保険ジャパン株式会社

損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)は、これまで、全国の営業拠点から寄せられる商品内容や事務処理に関する問い合わせに対し、専用の文書検索システムを用いて対応していました。しかし、複数のデータベースやシステムごとに異なる検索方法を使い分ける必要があり、回答までに多くの時間と人手に頼る結果を招いていました。この問題を解決したのが、「MAGELLAN BLOCKS」を活用したナレッジ検索システム「教えて!SOMPO」です。同システムの企画に携わった損害保険ジャパン株式会社の星田兼図氏と、システムの実装を担当したSOMPOシステムズ株式会社の武井信之氏に、「MAGELLAN BLOCKS」導入の経緯や導入効果、今後の展望について伺いました。

お話を伺った方

損害保険ジャパン株式会社
営業企画部 業務システム推進室 室長代理
星田兼図(ほしだ・けんと)氏

  

SOMPOシステムズ株式会社
デジタルトランスフォーメーション本部 副本部長
武井信之(たけい・のぶゆき)氏

97%の問い合わせがFAQシステムで完結、100万時間分の業務を削減

背景・課題

損保ジャパンは、以前より全国の営業拠点から寄せられる商品内容や事務処理に関する問い合わせに対して、該当するドキュメントを検索・照会できる仕組みを構築・運用していた。しかし、必要な情報に辿り着くには複数のデータベースを使い分けなければならず、かつ検索条件の入力には保険に関する専門知識が求められるため、検索精度の低さが課題となっていた。さらに同システムで疑問が解決しない場合は、本社の担当部署に問い合わせが集中することになるため、業務負荷による回答遅延、問い合わせ件数の削減が懸案となっていた。

実際の取り組み

保険に対する専門知識やデータの所在を知らなくても、自然文を入力するだけで商品事務にまつわる規定集やマニュアルにアクセスできる情報環境を構築するため、AIによる自然言語処理機能を備えた「MAGELLAN BLOCKS」の文書検索エンジンを導入。複数のクラウド上に分散保存されているデータベースの横断検索を目指し、2016年から実証実験を開始。2018年、「教えて!SOMPO」として営業店向けに正式リリースを果たした。以降、2019年には代理店向け、2021年にはモバイルデバイス向けと、領域や機能の拡充に取り組んでいる。

成果

自然文による検索により、80%を越える精度で必要な情報を抽出できるようになった。その結果、システム導入前よりも検索件数が1.25倍に増加したものの、電話による照会件数は45%減少。さらに同システム内で課題解決に至った割合は97.5%を超え、営業店の担当者が代理店からの問い合わせに費やしていた時間は1日当たり約40分減るなど、著しい業務効率化を実現した。これは年間100万時間分の業務効率化に相当する。

今後の展開について

代理店向け「教えて!SOMPO」では、難解な専門用語を排したわかりやすいコンテンツを拡充するなど、検索満足度の向上にも注力。さらに機能面では、ローコードでデータの処理フローを設計できる「MAGELLAN BLOCKS」のフローデザイナーを活用し、検索サジェスト機能の実装を実現するなど、多岐にわたる改善がいまも続く。今後は、営業支援にとどまらず、同グループのさまざまな社内業務に応えられるプラットフォームへの発展を目指したいと考えている。

本社への問い合わせ件数を減らすには、精度の高い横断検索システムの実現が急務でした

——SOMPOシステムズ 武井氏

教えて!SOMPO」開発に至たるまでの背景

武井氏 損保ジャパンは、自動車保険や火災保険などさまざまな種目の保険商品を提供しており、契約や商品、営業にまつわる情報は多岐にわたります。しかし、これまでこうした情報は一元管理されておらず、保存場所は複数ケ所にわたり、データ形式も検索システムも異なるなど、情報の利活用には一定水準以上の知識と経験が不可欠でした。長年勤務するベテラン社員ですら、どこにどんな情報が保管されているか完全に把握しきれない状況は、業務の効率化を妨げ、本社の業務負荷を高めます。代理店や営業店からの問い合わせを減らすには、精度の高い横断検索システムの実現が急務でした。

星田氏 2016年11月にプロトタイプの開発に着手し、2017年2月から社内トライアルがスタート。翌年の2018年3月には全国の営業店で「教えて!SOMPO」の本格運用が始まりました。その後も機能改善と拡張が続いており、2020年2月に代理店版、2021年2月からはモバイル版の運用も始まっています。

「MAGELLAN BLOCKS」を採用した経緯

武井氏 SOMPOホールディングスのデジタル戦略部(当時)と横断検索システムの検討が始まったのは2016年8月に遡ります。私自身は、「MAGELLAN BLOCKS」が選定された後、本開発の段階からこのプロジェクトに関わっています。グルーヴノーツとの最初のきっかけは、PoC(概念実証)の過程で社内の人間から紹介されたことだと伺っています。開発時は、検索処理の仕様検討や検証方法に至るまで、かなり広範囲にわたりコンサルティングをしていただきました。

星田氏 私は代理店版の企画から携わっているのですが、営業店版の開発を担当したメンバーからは、容易に仕組みを構築できる点とチューニングのしやすさ、自然言語処理に関するノウハウが豊富だったことなどが、「MAGELLAN BLOCKS」の採用の決め手だったと聞いています。もちろん、グルーヴノーツの持つ技術レベルの高さ、コンサルティングに対する熱心な姿勢も評価のポイントでした。

アンケート調査の結果、社員の約95%、代理店の約80%から高い評価を得ました

——損保ジャパン 星田氏

プロジェクト期間中に直面した課題

武井氏 「教えて!SOMPO」は業務上の必要に迫られて検索するためのシステムです。利用者からすれば、ほしい情報がすぐに見つけられて当たり前。電話で問い合わせるほうが便利で楽だということにしないためにも、Google検索のように自由な検索フレーズで検索できることや、環境や形式の異なる複数のデータベースからいかに迅速で的確な検索結果を引き出すかが、開発の大きなテーマでした。

星田氏 以前の検索システムには多数の入力フィールドがあり、各フィールドに沿ったキーワードを入れ、かつand検索やor検索などの検索式を指定し、はじめて一定水準の検索精度を維持していたのに対し、ユーザーが1つのフィールドにフリーワードを入れるだけで、適切な結果を出すのはかなり難度の高い作業でした。また、検索によって出力された検索結果が適切であったとしても、わかりにくい内容なら、探している情報だと認識してもらえない可能性もあります。そのため、代理店版「教えて!SOMPO」のリリースに当たっては、検索対象となるコンテンツの見直しを図り、4,000を超える新規コンテンツを追加するといった対応も行いました。

プロジェクトの成果について

武井氏 検索対象によって多少のバラツキはあるものの、コンテンツが増えた現在も検索精度は80%以上で、ものによっては90%を超えるケースもあるほど、高い精度を出せるようになっています。そのおかげで、本社への電話照会の件数は45%減少、営業店の担当者が代理店からの問い合わせに費やしていた時間が1日当たり約40分、年間換算で約100万時間もの業務時間削減につながるなど、著しい業務効率化を実現しています。

星田氏 「教えて!SOMPO」内で課題解決に至った割合は97.5%を超えており、最近行ったアンケート調査では、実に社員の約95%、代理店関係者の約80%から「役に立っている」という評価が得られました。知りたい情報をすぐに手にできる「教えて!SOMPO」の存在は、本社だけでなく、営業店や代理店の業務にも好影響を与えていることが数字の上でも証明できました。

今後の展望

武井氏 最近も「MAGELLAN BLOCKS」で提供されている「フローデザイナー」を活用して、サジェスト機能の追加に取り組むなど、検索品質の向上に引き続き取り組んでいます。フローデザイナーは、GUIベースで驚くほど簡単に使えるデータ処理のフローを設計でき、かゆいところに手が届く優れものだと感嘆しています。ものづくりの効率化や迅速化において、大きなメリットを得ています。今後はもっと活用の幅を広げていきたいと思っています。

星田氏 すでに社内では、わからないことがあれば、まず「教えて!SOMPO」で調べる習慣が付きつつあります。今後は、コンテンツの自動生成なども実現できたらいいですね。また、ゆくゆくは規定集やマニュアル、過去の照会事例だけでなく、損保ジャパンに関連するあらゆる情報にアクセスできるようなプラットフォームとして機能させたいとまで思っています。「教えて!SOMPO」の可能性をさらに広げられるよう、一つひとつのアイデアを着実に実現していければと思っています。

武井氏 星田の言うように「教えて!SOMPO」は、現場から一二を争う高い評価を得ており、情報系の基盤システムとしての重要性も増しています。今後は機能の改善や拡張に加え、安定した運用が大きなテーマになるのは間違いありません。「教えて!SOMPO」は、もはや業務になくてはならないシステムであり、AIのさらなる活用によって業界でも類を見ないシステムになる可能性を秘めています。これからも「教えて!SOMPO」を大事に育てていくつもりです。

今後、グルーヴノーツに期待することは

星田氏 すでにさまざまな面で伴走支援をいただいていますが、新たなシステムの構想するにあたっては、どのような手段を用いれば実現性が高まるのか、判断に悩む場面は少なくありません。グルーヴノーツは損害保険事業の実務や当社に関してかなり深くまで理解していただいているので、今後も「教えて!SOMPO」に限らず、業務効率化や新たなビジネスの創造につながる取り組みをご一緒できたらと思っています。

武井氏 グルーヴノーツは、システムの企画から実装のみならず、効果創出についても非常に親身になっていただいています。この手のFAQシステムにおいて、一定の検索精度の実現や精度を高める取り組みは非常に大切で、精度の数値が上がったとしても、それを良くなったと感じるかなど定量的に評価するのはなかなか難しいものです。すでにご相談申し上げている「教えて!SOMPO」の機能拡張の実現はもちろん、いち技術者としては新たなAIを活用したさまざまな取り組みに、これからも協力していただけたら嬉しく思います。

掲載日:2022年10月
構成:武田敏則(グレタケ)

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