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新たなデータ活用により、学生リクルーティング業務の高度化を目指して

立命館アジア太平洋大学

立命館アジア太平洋大学(APU)は、世界94の国と地域から数多くの留学生を集める国際色豊かな大学です。例年同学を志望する海外学生の数は、770名(学部留学生のみ660名、大学院110名)の定員に対して1700名ほど。優秀な学生を一人でも多く獲得するには、出身国・地域ごとに異なる制度に対応した受け入れ体制を整えなければなりません。むろん、無駄が多いアナログな手続からの脱却は効率化の大前提。避けて通れない道と言えます。

APUは、2018年からグルーヴノーツと連携し、3カ年計画でアナログ業務のデジタル化に取り組みはじめました。海外学生のリクルーティングを担当するアドミッションズ・オフィスの垰口広和氏は、APUにおけるデジタルシフトについて「単に事務作業のスリム化、効率化に留まるものではない」と話します。垰口氏にAPUにおけるICT活用の実態と今後の展望を聞きました。

[お話を伺った方]立命館アジア太平洋大学 垰口広和氏

お話を伺った方

立命館アジア太平洋大学
アドミッションズ・オフィス(国際) 課長補佐
垰口広和(たおぐち・ひろかず)氏

効率化は途中経過に過ぎません。
ゴールは優秀な学生を集め、一人ひとりに寄り添った支援を提供することだと思っています

背景・課題

  • 国境を越える学生獲得競争の激化
  • 紙、郵送、対面を前提とした出願・入学手続の限界
  • 煩雑かつ複雑な学生リクルーティング業務の効率化が急務に
  • データ活用に関する知見の乏しさ

成果

  • 週次報告書の作成に費やしていた作業時間が不要に
  • 入試選考業務の自動化、高度化に目処
  • KPIの進捗管理、PDCAサイクルを回す体制の確立に成功

実際の取り組み

紙の願書を廃止しデジタル化に踏み切るとともに、入試関連書類、在学中の成績、学生プロフィール、アンケート結果などのリクルーティング業務に関わるさまざまなデータを「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」に集約。連携する可視化ツールを介して、いつでも必要な情報を把握・分析できる環境を実現した。さらに志願者が出願時に提出するエッセイをAIで解析し、同窓生が過去に提出したエッセイとの一致度を割り出し類似度検知に役立てるなど、先進的な試みにも積極的に取り組んでいる。

今後の展開について

入学数の予測のほか、理想的な学生像を定量化することによって、APUにふさわしい優秀学生を輩出する国や出身校の傾向を可視化。海外学生リクルーティング活動の精緻化や、在学生の学習指導、生活支援のパーソナライズ化にも役立てたいと考えている。

出願・入学手続きの約9割がデジタル化済み。
しかし当初は何から手をつけるべきかわからない状態でした

利用事例:APUとは?

APUとは?

APUは2000年に開学した大分県別府市にある国際大学です。開学当初から、「真の国際大学」になるべく、全学生に占める留学生の割合、外国籍教員の比率、留学生の出身国・地域比率をそれぞれ50%にする「3つの50」(APU アクションプラン)を掲げており、その先進的な教育方針が内外から注目を集めてきました。現在では日本を含む95の国と地域から学生が集い(2021年5月1日現在)、毎年、学部、大学院生を合わせると留学生だけで1700を超える願書を受け付け、700名を超える数を迎え入れています。

デジタル化の立ち後れが課題に

海外の主要大学では、2000年代初頭からいち早く出願や入学手続のデジタル化が進められていましたが、日本の大学では立ち後れが目立つ状況が続いており、それはAPUも例外ではありませんでした。優秀な学生の獲得競争は国境を越え、年々激しさを増しています。無駄な業務を削ぎ落とし、戦略的な活動に費やす時間を増やすべきなのは言うまでもありません。しかし、出願・入学手続が紙や郵送が前提だったころは、受け入れ側の事務作業は煩雑さを極め、それどころではなかったというのが現実でした。

すべては手探りからのスタートだった

2018年に入り、大学運営業務のデジタル化を進める方針が打ち出されましたが、すぐに事態が好転したわけではありません。複数のITベンダーやシステム開発会社とも接触を図ってはみたものの、われわれ自身、具体的にどんなデータを集めれば何ができるのか、イメージがつかめていなかったこともあり、当時検討していた仕様が本当に適切と言えるのか、判断がつかなかったからです。今後の対応に苦慮していたとき、本学のGoverning Advisory Boardに委員としてグルーヴノーツの佐々木久美子会長が参加してくださっていることがわかりました。テクノロジーに強くて評判のいい会社であることは学内で周知されていたため、「相談してみよう」という話になりました。これがグルーヴノーツとのご縁の始まりでした。

「まずは、やれるところからやりましょう」

ありがたかったのは、仕様が固まる前段階から、とても親身になって相談に乗っていただけたことですね。何度もヒアリングを重ねていただき、課題の整理、われわれが実現したいことを引き出していただいた結果、2019年に入ると、まず出願時のエッセイ解析の目途が立ちました。そしてデータの可視化のために何を整える必要があるかがわかり、連携させるデータの運用見通しが立ちました。これも、議論を重ねて解決のための具体策を示していただくだけでなく「まずは、やれるところからやりましょう」と励ましていただいたおかげだと思います。

「MAGELLAN BLOCKS」の導入で加速するデジタル施策

エッセイの解析、データの可視化の見通しが立ったことで、入試業務におけるデジタル化の全体像、輪郭がはっきりと見えるようになりました。そして、その基本となるさまざまなデータを「MAGELLAN BLOCKS」で一元化する仕組みを整えたのは、われわれにとって大きな前進でした。同じデータソースで、同じデータを見ながら議論や意思決定を行う基盤が整ったからです。入試受付業務の完全デジタル化とともに、週次で行っていたレポーティング業務の自動化や、開学からの出願情報や高校等からの実績データを投入し、その可視化を自動化させたりすることで、業務の効率化は飛躍的に進みましたし、同時並行で実現していった入学手続金のオンライン決済、推薦状や誓約書のサイン認証のデジタル化に弾みがついたのは間違いありません。いまでは、出願・入学手続の9割がデジタルに対応するまでになり、「MAGELLAN BLOCKS」はこうしたデジタル施策の基盤になっています。これもグルーヴノーツのみなさんが粘り強く伴走を続けてくれたおかげです。

「MAGELLAN BLOCKS」でデータの一元化を実現。
より戦略的な活用法をイメージできるようになりました

利用事例:グルーヴノーツの提案で新たな分析に着手

グルーヴノーツの提案で新たな分析に着手

業務のデジタル化を推進する一方で、提出される文章そのものの解析にも取り組みたいという欲もありました。むしろそちらの方が先だったかもしれません。グルーヴノーツはデータ分析に関わる強みをいかんなく発揮してくれました。入学時に提出される数種のエッセイを「AI・深層学習にかけて分析してみてはどうか」と言うのです。AIでより高度に類似化を判断できるかも知れない、そしてそれを入試へも応用できるという提案を受けたときは、想像もしていなかったデータ活用法だったので、非常に興味を持ちました。

エッセイをベクトル分析し、過去提出分との類似度比較に活用

同じ高校の卒業生がかつて提出したエッセイをデータ化し、新たに提出されたエッセイとともにベクトル分析にかけると、内容の類似度を比較できます。その結果、一定以上の一致が見られれば、同一人物(に限りなく近い)と見なせるのではないかという提案でした。文章の前後を入れ替えたり、単語選びや言葉尻を変えたりしたとしても、エッセイを構成する要素や分脈から判定が可能であれば実用性はありそうです。2019年に学内で小規模な実証実験を試みたところ、かなりの精度で類似度が計れたので、テスト期間を経て2021年から段階的に導入をはじめました。

データ活用に自信。さらなる展開に弾み

こうした試みにより、アナログでは人手がかかり過ぎて現実不可能と思われた施策が、デジタルなら比較的容易に実現できることを実感できたのは、とても貴重な体験だったと思います。類似度の結果だけを持って合格、不合格を決めるわけにはいきませんが、一つの指標として定量化し、注意すべき対象にアラートを出すには十分使えそうです。データを気軽に使える基盤が整うことによって、事務作業の削減と高度な分析が両立できるという手応えを感じました。

データドリブンな組織カルチャーへ

何か新しい試みをはじめる度に感じていた、心理的なハードルがかなり低くなったと思います。既存の取り組みを見直すにしても、新しい企画を立ち上げるにしても、まずは現状が視覚化されたダッシュボードを見ながら話し合うことがあたり前なったのは、以前とは大きく違う点ですね。客観的なデータという共通言語をメンバーと共有した結果、取り組みまでのリードタイムが短くなりましたし、結果に対する評価、修正対応のスピードも格段に上がりました。PDCAサイクルが素早く円滑に回せるようになったのは、「MAGELLAN BLOCKS」を導入して良かったことの一つです。

利用事例:MAGELLAN BLOCKSの活用イメージ

世界から「原石」を集め、磨きをかけるためにも、データ活用は欠かせないものだと考えています

目指すは、学生に寄り添ったデータ活用

これまで申し上げた活用は、あくまでも途中段階に過ぎません。今後はこれまでの経験を踏まえて、さらに一段高い活用に取り組んでいくつもりです。たとえば、4年間の在学期間中の変遷や卒業後の活躍状況などの情報を加味し、APUにフィットする学生像を定量的に示せるようになれば、優先的に訪問してリクルーティング活動に注力すべき国や高校の割り出しにも使えるかも知れません。また逆に、学習に遅れが目立つ学生、学校生活に悩みを抱える学生を見つけ、手厚いサポートを提供することも可能になるはずです。日本にでは少子高齢化でマーケットそのものが縮小し、少ないパイの取り合いになっていますが、世界にはまだ巨大なマーケットが広がっています。私たちは世界の名だたる大学と肩を並べ、優秀な学生の激しい獲得競争に加わっていかなければなりません。世界中から素養の高い、そして何よりも本学の多文化共生キャンパスに相応しい「原石」探し出し、集めた「原石」に磨きを掛けるには、データ活用はなくてはならないものになるでしょう。

データの増加とともに、さらに高まる期待感

さらに2021年からは、国内の大学に先駆けて、出願を検討する高校生からの問い合わせ対応から、入試関連イベントへの参加の状況、出願、面接、合格発表、入学手続までを同一プラットフォーム上で管理し、すべての取り組みがオンライン上で完結する仕組みを採り入れました。これにより、出願の間口が広がるのはもちろん、「MAGELLAN BLOCKS」に集まる情報の種類や量はさらに増えます。せっかく集めた貴重なデータです。これをいかにうまく、効果的に活用したらいいか、グルーヴノーツのみなさんには、引き続き知恵を貸していただければと思っています。

今後、グルーヴノーツに期待することは?

デジタル化の効能は、何よりもマスに向けた一括告知、一括対応による画一的な効率化とは異なり、一人ひとりの学生と向き合うことを可能にする点にあると思います。自動化、省力化によって生まれた時間を、海外学生のリクルーティングや在校生の満足度向上につながる施策に費やせるようになるからです。海外担当のアドミッションズの使命は、一人でも多くAPUの環境に合う学生を集めること。大学が存続し続ける限りこの使命が変わることはありません。たとえば、現在在学生の9割を占めるのはアジアの学生ですが、今後このアジア以外からも優秀な学生を集めたいと考えています。こういった巨大なマーケットを想定した場合、人的リソースだけを想定した考え方では限界があります。AIが得意なこと、われわれ人間にしかできないことを切り分け、役割分担を行うという視点が欠かせません。その発想を実現できる「MAGELLAN BLOCKS」ならびに、グルーヴノーツには大きな期待を寄せています。

掲載日:2021年10月
構成:武田敏則(グレタケ)

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